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2016年9月8日 木曜日配信  文 スタッフ-matsumoto

3Dプリンターが叶える国内開発義足―パラリンピック契機に拡大?!


コラム 3Dプリンター 機械の転職
障害者スポーツの4年に1度の祭典、第15回夏季パラリンピックが7日夜(日本時間8日朝)、ブラジル・リオデジャネイロのマラカナン競技場で開会式が行われ、開幕しました。
南米大陸での開催は史上初となり、159カ国・地域から約4300人の選手が参加し、18日の閉幕まで22競技528種目で熱戦が繰り広げられます。
そんなパラリンピック出場選手の注目を集めているのが、日本メーカーの義足です。
日本メーカーは、義足の開発に相次ぎ乗り出しています。
化学大手のJSRは先月29日、ベンチャー企業のSHCデザイン(神奈川県茅ケ崎市)と、3Dプリンターで作れる安価な義足を開発したと発表しました。
競技用では、ミズノやソニー系ベンチャーが開発を進めています。
義足は一般用で一定の需要が見込めるほか、競技用の開発で得た技術を他の用途に展開できるなど、社会貢献以外のメリットが少なくありません。
ともに海外メーカー製が主流を占めるなか、一部メーカーは今回開幕したリオデジャネイロ・パラリンピックの出場選手に提供するなど、技術力を誇示する構えを示していました。

■3Dプリンターで叶えるJSRの義足
JSRがSHCデザインと開発した義足は、価格を一般的な製品の2~3割に抑えました。
JSRは、独自のポリマー技術を活かして開発した3Dプリンター用フィラメント材料を活用したため、低価格なだけでなく軽量で、空港の金属探知機に引っかからず、水にぬれても壊れないなどの特徴があります。
フィラメントとは、3Dプリンターの方式の中で熱溶解積層方式に使用する樹脂材料です。
3次元的に製造する方法としては、熱溶解積層、光造形、粉末固着、粉末焼結、インクジェット、さらには切削加工などのさまざまな方式があります。
その中で、熱溶解積層方式の3Dプリンターは工業用途から個人用途まで幅広く展開されており、この方式に使用される材料であるフィラメントは3Dプリンティングの可能性を左右するものとして注目を集めています。
現在、熱溶解積層方式の市場ではPLA系やABS系の材料が主に使われていますが、強度などフィラメント材料の性質における制約が用途を制限しているのが現状です。
使用するフィラメント材料の強度が低い、加工工程でフィラメントが折れて長時間安定的に成形できない、完成した成形品がもろい、といった課題が出てきます。
しかしJSR独自のフィラメント材料は、従来のPLA系やABS系の材料と比較して、靱性を高く設計したものとなります。
先に挙げたような課題を解決し、実用製品に必要な強度の成形品を制作することができるのです。
実用製品として十分耐えられる強度の造形物の制作が可能となると、従来は強度不足により形状・デザイン・組み付けなどを確認する試作品の制作に制限されていた3Dプリンターを、実製品の生産に使用することが可能になります。
また、従来の射出成形では作れなかったような複雑なデザインをもつ樹脂製品を簡便に生産できるようになります。
これに伴い、市場ニーズの細分化に適合した個別化製品を効率的に生産することが可能となり、3Dプリンターの可能性が大きく広がるでしょう。
両社では「2足目」の需要をにらみ、2017年に他社の製造支援を始める計画です。
今後は全日本空輸が空港での実証実験などで協力する予定のようです。

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SHCデザインによると、義足を必要としている人は世界に約1700万人いますが、価格が30万~40万円と高く、購入できる人は限られているといいます。
このため「海外にも広めたい」と普及拡大に意欲をみせています。
一方、開発は競技用でも加速しています。
ソニー系ベンチャーのサイボーグ(東京都渋谷区)は主要パーツの「板バネ」の素材に炭素繊維を使い、強度や走行性能を高めた義足をソニーコンピュータサイエンス研究所や東レと製品化し、男子400メートルリレーの佐藤圭太選手に提供するようです。
また、ミズノも福祉機器を開発・販売する今仙技術研究所(岐阜県各務原市)と10月から板バネの市販にも乗り出し、事業領域を拡大するほか、義足用スパイクを共同開発して、パラリンピックの陸上男子走り幅跳びに出場する山本篤選手に提供するようです。
競技用では、ほかにも三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下の地球快適化インスティテュート(東京都千代田区)が開発中で、陸上女子100メートルの前川楓選手と契約してすでに試作品の検証に着手しており、2020年の東京大会に間に合わせたいとしています。
2020年の東京パラリンピックを見据え、各社の開発競争にも熱が入ります。
軽さ、強度、操作性、繊細さなど、障害者スポーツ最大の祭典で繰り広げられる試合を陰で支えるのが、日本企業の様々な技術です。
今後も日本の技術が、様々なモノを通して世界に広がっていくでしょう。









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